クラウド化する世界


第1章の、発電所の発展の物語はちょっとソクゾクする。中央発電所の集権の効率化の歴史は、太陽光パネルや家庭用燃料電池など発電の分散を奨励する今の世情を考えると、ちょっと切ない思いがする。

コンピュータの発展も、汎用機の中央集権からクライアント/サーバー型の分散へ。図式は似ているが、実情は異なるのだという。
「ワールドワイドコンピュータが作り出した多様化の文化は、実は凡庸の文化であることがいづれわかるだろう。何マイルもの広がりがありながら、わずか1インチの深さしかない文化だ」、と予言している。
「インターネットは情報処理機械を接続するだけではない、それは人々をも接続する。インターネットは我々を相互に接続し、我々とコンピュータを接続する。我々の知能がワールドワイドコンピュータのパワーの一部になればなるほど、我々の知能はソフトウェアコードやマイクロチップに組み込まれていく。我々がオンライン化するときに、我々はインターネット上のノードとなる。これは単なる比喩ではない」、と、まるで攻殻機動隊の世界観だ。でも、携帯電話はおそらくこの方向へ進化するだろう。13人の賢者(ルートサーバー)は、密かに我々を導く。国境の無いインターネット。しかし、13人が管理する世界に反抗する者も存在する。現実世界の国境にそって、インターネットを分断しようとする。それも現在時点のようだ。




クラウド化する世界
ニコラス・G・カー (著), Nicholas Carr (著), 村上 彩 (翻訳)
出版社: 翔泳社 (2008/10/10)

目次:
プロローグ ボストンの戸口
第1部 一つの機械
第1章 バーデンの水車
第2章 発明家と実務家
第3章 デジタル時代のからくり装置
第4章 さようなら、ミスターゲイツ
第5章 ザ・ホワイトシティ コロンビア万国博覧会
第2部 雲の中に住んで
第6章 ワールドワイドコンピュータ
第7章 多数から少数へ
第8章 大いなるバラ売り
第9章 ネットと戦う
第10章 クモの巣
第11章 iGod
エピローグ 炎とフィラメント